はじめに

 

「もし子どもの時、こんな手伝いをやる機会があったら、読書感想文なんかじゃなくてもっと生き生きした作文が書けたのに」

 

 スタジオジブリの『おもひでぽろぽろ』という作品の主人公、タエ子の台詞である。27歳で東京のOLをしているタエ子はふと休暇を取り、山形へ紅花摘み体験の旅に出る。道中、彼女は小学5年生のころの記憶を振り返りながら自分と対峙していく。小学生のタエ子は作文が上手だった。読書感想文が学級に貼りだされ、コンクールに出られるかもしれないと母親に自慢した時のことを思い出す。しかし27歳のタエ子が山形の田舎で過ごす日々は、幼いころの読書体験より「もっと生き生きした」ものだった。

 『おもひでぽろぽろ』は高畑勲監督という、ジブリ宮崎駿「じゃない方」の監督が手がけた作品である。じゃない方芸人である。世間的にマイナーかもしれないのが悲しいが、私はこの作品が大好きなのだ。小学生のころから50回くらい見ている(ジブリの作品はだいたいどれもこれくらい見ているが)。特に主人公の思い出と同じ小学5年生を過ぎたあたりから、タエ子と自分が似ていることに気付き始めて、めちゃくちゃに感情移入して毎回泣きながら見ている。いい子ぶろうとしてしまうところ、甘ったれているところ、そういう自分が嫌いなところ。算数が苦手で作文が得意なところ。私も中学生の時、読書感想文のコンクールに出してもらったことがある。当時は嬉しかったが、今振り返るとつまらない作文だった。よくある、作品の内容と自分の体験をリンクさせて、最終的に反省と今後の目標を述べる構造である。豊かな作品世界は私の薄っぺらな反省文のダシにされてしまった。当時の私は大人が喜ぶ作文の書き方をわきまえていた。いい子ぶろうとしても底が見えるというものだ。そんなやつが書いた作文が面白いはずないのだ。

 今の私はあと少しでOLのタエ子に追いついてしまうという年齢である。タエ子は「もっと生き生きとした作文が書けたのに」と後悔した。わたしも自分に素直に作文を書いてみたかった。でも今は作文を書いても学校に提出しなくていいし、親に見せなくてもいいのだ。自分のために、自分が面白かったこと、疑問に思ったこと、なんでも自由に書いていいのだ。だからこのブログも自分のために書きたい。自分が感じた驚きや喜びを素直に書きたい。

 

 ブログだし、途中で恥ずかしくなっちゃうかも、他人の意見を気にしすぎちゃうかも、という不安があるので、そういう時はこのめちゃめちゃ恥ずかしい一番最初のブログを読んで一回正気を失ってからまた書きたいときに書きたい作文を書きたいと思います。